A邸の前の道は急な坂道になっており、住居や庭は通常の2階に相当する高さにある。そのため一階はビルトインガレージとなっており、庭部分の半分はガレージの上に土がのっかている格好になっている。
今回お話をいただいたのは、このガレージの上の土の部分が浅く水はけが悪いため、それをなんとかしたい、ということが始まりでした。
現場を見たところ木が数本うわっているのみで、あとは土になっています。
浅い方から深い方へと水を誘導するように、穴の空いた有孔パイプを埋め、更に土に水が染み込みやすくなるように浸透マスを作る予定でいました。
しかし現地を見たとき直ぐに庭のイメージが浮かんだので、何となくこれを簡単なスケッチにして見せたところ「こんなに小さなスペースで庭が作れるんですか?」と関心を持っていただけました。
何もないスペースは狭く見えますが、十分立派な庭ができますよ!と説明をし、急遽庭作りをする事になりました。
庭部分のスペースは横に長く、縦の奥行きがない。しかも高台にあるのであまり奥に行くと少し怖さを感じる。
そこで、とにかく広さと安定感を感じてもらうために、地形と植栽のバランスに気を配りました。
お施主様の希望はなるべく既存の木を活かしたいという事と、当初の問題でもあった水はけの良い庭であること、そして前が道路なので目隠しが欲しい、という事。
そこで道沿いは大きめの常緑樹で構成し、窓に近いところに落葉樹をあしらうことで奥行き感を出すことに。
大雨が降ると雨樋からの水が染み込まずに溜まってしまう、という当初からの悩みを解決するため、雨樋の排水付近から蹲に向けて水がスムーズに流れるような仕掛けを地中に作り、蹲下には大きな透水層を設けました。
そして今回蹲の付近には水琴窟も作らせていただきました。
水落ちの不規則なリズムを作るのにはかなり苦労しましたが、こういう仕事はなかなかないので、良い経験となりました。感謝しております。
そして今回、更に経験となったのがスギゴケ。
恐らく大半の庭師さんが叩いて圧着させていると思いますし、私もそうならってきました。
しかし、今回新潟にある苔屋さんから芽が潰れるから絶対に叩いてはダメだということを聞き(時期によるのかもしれません)、しかも、植え付けと同時に苔の種を蒔くようにとのご指導を頂きました。
スギゴケはしばらくするとダメになってしまうことが多いのですが、おかげさまで数年経った今でも綺麗に地面を覆っています。
使用樹木 アラカシ、シラカシ、マキ、ソヨゴ、ヒサカキ、ツバキ(ワビスケ)、クロモジ、コハウチワカエデ、ノムラモミジ、カンツバキ、サルココッカ、
下草 セキショウ、バイカウツギ、ベニシダ、ヤブコウジ、フッキソウ、ギボウシ、スギゴケ
設備、修景物 蹲(つくばい)、水琴窟、濡れ縁